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作・サボテンエックス

僕は世間に漂う流れ、というのがあまり好きではない。というか、作られた流れというのが好きではない。具体的には、流行だとか成功の波に乗るとか、そういった類の物だ。本来、流れとは自然と流れているものであって、人によって作られるものじゃない。

父は、僕の知る限り4回の転職をしている。職場でイジメられたり、倒産したり色々苦労したようだ。思えば、家族と父の仕事に関して話す時、重い雰囲気で冷戦が始まるか、ミサイルのように家財道具が飛び交うか、のどちらかだった気がする。

 

 これは、世間で言う流れに乗れなかったからだろうか。父は2年前に一千万程の借金を抱えたまま倒れ、緊急搬送された。一命をとりとめ、仕事をたたみ、借金は国の制度で霧散した。それと同時に、家族に漂う暗い闇も消滅していた。

 父と母の心からの笑顔を見たのは、思い出す限り初めてだった。これでも、流れに乗ることが正しいのだろうか。